人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Be a SAMURAI

侍ドクターとの晩餐はかなり盛り上がった。日本人として、アメリカで勝負している人の気迫みたいなものが言葉やふるまいの端々にあらわれる。俺もMBA留学という形でアメリカ人に揉まれてはいるが、それでもアメリカで腰をすえて、アメリカで医師として確固たるポジションを獲得しようとしている人の覚悟にはかなわない。日本にいれば今頃何千万円の収入を得て安定していたかもしれないが、それを捨て、よりレベルの高いアメリカで勝負し、晩成しようとする。いやー、侍でした。

侍ドクターほどではないが、俺もそれなりの機会費用(日本で2年働いていれば得られた収入)を振り切って、留学にきている。もちろん長期でみた場合のアップサイド・チャンス(例えば外資系企業に入った場合の年収増、とか)も見込んでいるが、日本に残っていた場合に比べるとリスクがあることには変わらない。

経済学では、企業が生み出す利益は、長期的にはその企業のもつ資産に対するリターンに帰属する。それも他には容易にマネできない、稀少な資産だ。この資産をレントという。それは例えばトヨタの生産システム(暗黙知の部分が多いのでマネされにくい)だったり、製薬企業が持つ開発薬の特許(規制されるのでマネされにくい)、タクシーの運営許可証、小売店舗のロケーションだったりする。スポーツ選手の特異な身体能力なんかもそうだ。
自分を自営業者とすると、自分が長期的に生み出せる利益は以下の変数で説明される:

長期的な利益 = レント + compensating differentials

compensating differentialsは、レントだけでは説明しきれない部分。まあ苦しまぎれの概念かもしれないが(笑)。例えば誰もやりたがらないような仕事(不衛生な仕事か)の場合、compensating differentialsはプラスになる。仕事自体は高い能力を必要としないが、追加的な報酬を与えないと誰もやってくれないから。なので能力に見あった利益よりは、compensating differentialsの分だけ、多くの利益を得られる。
逆にcompensating differentialsがマイナスの場合もある。他の仕事をやればもっと儲かるし能力あるのに、あえて低い賃金で働く場合だ。例えば学歴があるのに、ヨガ教室の講師をやったり、あるいは大学教授をしたりとか。機会費用が高いのに、あえてその仕事を選んでいるケース。解釈としては、その仕事をやること自体から得られる喜び(カネでは計れないもの=自己実現、名誉、等?)がここに含まれている。

あたりまえだが、仕事はカネだけではないのだ。屁理屈をこねれば、今俺は学生なので利益はゼロ、ていうか借金しているのでマイナス状態。学校で勉強をして自分のレント(=人的資本)を高める努力をしているが、その分リスクテイキングをしているのでcompensating differentialsは大幅にマイナスか。

将来つく職業と、その収入について考える際も、このシンプルな公式を頭にいれてみるとよい。どこまでが自分の能力(=レント)によるもので、どこまでcompensating differentialsとして差し引けるのか(あるいは足すのか)。めちゃくちゃ収入がいい仕事でも、結局compensating differentialsがものすごくプラス、ってだけなのかもしれない。あるいは自分の能力に比して収入はそこそこでも、その分やりがいがあって、compensating differentialsがマイナスなのかもしれない。
(もちろん、例のごとく効率的市場を想定しているので労働組合とか制度的な要因は一切捨象されていることにご留意)

すっかり意気投合したので、また近いうちに侍ドクターとまた飲むことに。本当に変わっている人で、面白い。日本にはいないタイプ。俺もそうだからそういう人ばかりと仲良くなるのかもしれないが・・・・


少しでも面白い!と思われた方はポチッとお願いします!
ブログ王

  by helterskelter2010 | 2009-02-17 02:01 | Private Life

<< Haruki Murakami... 宴の後 >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE