エベレストの惨劇から学ぶ意思決定①

b0131315_1713521.jpg

先週のManagerial Decision Makingで扱ったケースは、Jon Krakauer著「Into Thin Air」(邦題「空へ」)だった。俺は時間ないので要点をつまみ読みしただけだが、この本は「買い」だろう。簡潔でありながら、真に迫る描写がうまい。

内容は、1996年に起きた「エベレストの悲劇」 ―遭難で9人の死者を出した、エベレスト登山史上最悪の事件だ。死者の中には、難波康子さんという日本人女性も含まれていたので、日本でもこの事故は話題になった。Scott FischerとRob Hallという、それぞれ超一流の登山家が登山グループを率いていたのだが、そのリーダー双方ともこの遭難で死亡したこともショッキングな事実であった。

何でコレがManagerial Decision Makingの題材になるのか?
1つは、意思決定が本当にクリティカルな結果(=死)をもたらす状況で、どのようなリーダーシップが有効なのか、考える材料になるということ。1つ1つは小さなミスだったのが積み重なり、大惨事につながる経緯をこの本は非常にうまく描いている。
2つ目は、登山の参加者1人1人の行動動機の違い、心理的バイアスがどのようにこの事故に影響していたかについて考えること。心理的バイアスを意識するのが、この授業の肝であるといっても過言ではない。

当時は商業登山というのが流行っていて、カネさえ出せば、登山経験がそんなになくても一流ガイド付きでエベレストの頂上を目指すツアーに参加できた(今でもそうかな)。もちろん安くはない。Rob Hallのツアーでは1人当たり約700万円払っていたらしい。登山ガイドたちにとって、登山ツアーはかなり割りのいいビジネスだったわけだ。



ここで、登山ツアーにかかわった人・集団と、それぞれの行動動機を紹介しておこう。

○Scott Fischer
アメリカ人。伝説的な登山家。酸素ボンベなしで1994年にエベレスト登頂を達成している。Mountain Madnessという登山ガイド会社を立ち上げた。
b0131315_174670.gif


○Rob Hall
ニュージーランド人。Fischer同様、一流の登山家。Adventure Consultantsという登山ガイドのベンチャーを立ち上げた。この登山ツアーを成功させて、自分の登山ビジネスを確立させたい。その意味では、Fishcerに負けるわけにはいかない。登頂させる人数で勝ちたい。「Into Thin Air」の著者でありジャーナリストであるKrakauerは、Hallのグループに属していた。(邪推すれば、Hallにとっては、このツアーを記事にしてくれるKrakauerは登頂を優先させるべき顧客、ということになる)。
b0131315_178451.jpg


○登山ツアーの顧客
多くが、(エベレスト級の山については)登山経験の浅い、富裕な人たち。何でカネまだ出してこんな危ないことしたいのか、俺的にはサッパリ分からん。「地上で最も高いところに立つ」ことで「俺はてっぺんにいる」という充実感を得られるのであろうか。普通の人にはなかなかできないことをやり遂げる(ガイドの力は借りるが)、というExclusivityがたまらないのだろうか。

○ガイド
Fischer、Hall以外にも、登山プロのガイドがそれぞれのグループにつく。まあ、タフガイな連中だ。自ら酸素ボンベなしでの同行を志願するヤツもいる。刺激を求める、というのもあるし、カネ(ガイド料)もらってエベレストに登れる、というのがものすごいインセンティヴのよう。FischerやHallのように、いずれ自分で登山ガイド・ビジネスを立ち上げようとする者にとっては、「エベレストに登った。それも酸素ボンベなしで!」という実績を積んでおくのは超重要のようだ。

○シェルパ
高山民族の出身で、主に登山ツアーの側面支援を行う(テントづくりとか、ロープをかけたりとか)。仕事でやっている。登頂まで付き合う役を得られれば、評判が高まるので、何としても登頂まで手伝う仕事がほしい。

次回に続く・・・・・

少しでも面白い!と思われた方はポチッとお願いします!
ブログ王

[PR]

  by helterskelter2010 | 2009-03-07 17:10 | Study

<< PRODIGY ―Invade... シカゴ・ブルース >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE