エベレストの惨劇から学ぶ意思決定③

エベレストの惨劇の事例から、行動バイアス・組織の問題についてどのようなインプリケーションが得られるだろうか。

1.過信(Overconfidence)
まず頭に浮かびやすいのがコレだろう。そもそもこの授業も一貫して、「人の判断は放っておくと全て過信に陥りやすい。そのために自分の判断を左右するバイアスを自覚し、分析ツールを援用すべし」ということを繰り返し習う。エベレストの場合、まず指摘できるのがFischer、Hall等のプロの過信だろう。どんな経験者でも、何かのきっかけで高山病になるリスクはある。Fischerはその辺、自分の経験値・能力を過信していたのかもしれない。Hallはこのエベレスト登頂までは、どの登山日でも天候に恵まれていた。これまで大丈夫だったから、今回も天候は間違いない、と思い込んでいたのかもしれない。確かにこの事件の日、予報に基づけば天候はベストだったという。ただ、登山までいかなくても山にキャンプにでも行かれた方なら分かると思うが、山ってのは天気がしょっちゅう変わる。天候は、特にリスクコントロールしにくいものだ。Hallの見通しが鋭かったとしても、これまでの登頂が全て天候に恵まれていたのは、Hallの経験・能力だけに基づくものとは考えにくい。実際、サイコロ投げるだけでも、100人がやれば数人は同じ数字を連続回だすことは全く珍しくない。正規分布を想定してもそれは起きる。成功経験が蓄積されると、どこまでが自分の能力で、どこまでが運によるものなのかは、区別しにくくなる。

2.ゴール=登頂という思い込み
当たり前だが、登頂したら下山して帰らないといけない。だがエベレストを登っているときは、「頂上を目指す」のがどうしても頭の中ではゴールに設定されてしまう。それがゆえに、頂上から下山する時間帯とか、下山に要する時間・酸素量とかを、ついつい過小評価してしまう。遭難死は下山時にもっとも起こりやすいという統計もある。

3.Regret(No Action)> Regret (Action)
これは上の2.と関連する。当然、顧客は登頂したい。しかし、本当に安全を考えるなら、天候・時間帯を考えて、途中で引き返す勇気も必要だろう。実際、Hallは午後1時までに登頂する時間設定をし、それまでに登頂できない人は引き返す、というルールをメンバーに課していた。しかし長い時間かけて準備して、700万円以上払って、登頂をあきらめるというのはかなり苦渋の決断であることは想像に難くない。
「行動を起こしたけど、ダメだったことを後悔する」(Regret(Action))と、「行動を起こさなかったことを、後悔する」(Regret(No Action))を比べると、どうも一般には後者のほうが後悔の度合いが強いという研究結果があるらしい。宝くじを毎年のように同じ番号ルールで買っていた人が、ある年だけたまたま買わなかったら、それが一等賞を引かれてしまったときの悔しさは尋常ではないだろう(笑)。
エベレスト登山の場合、「登頂を目指さなかった後悔」というのは、相当にデカい。Hallの顧客は、Hallのルールを守らずに登山を続けた。しかし言いだしっぺのHall自身も、そのルールを守らず、午後3時過ぎまで粘り登頂した。これはなぜか?次の4で触れる。

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ブログ王

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  by helterskelter2010 | 2009-03-10 00:25 | Study

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