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TAXはマジで勉強しとかなければいけません

Tax & Business Strategyという授業はマジでeye openingだ。なにせ課税の取り扱い方を変えるだけで、とんでもなくデカイ金額が動く。今読んでいるケースはSeagram社がDuPont社の株をDupont社に売却する、ってディールなんだが、コレをSales treatmentにするかDividend treatmentにするかで、何と節税金額が約1000億円以上も変わるのだ。以前、某投資銀行のMDの方が「M&A、特にプロダクトで頭角を現すには、計数スキルは当たり前として、法律・会計・税務の知識がエッジになる。今からお前も勉強しとけ」といわれたが、うーむ確かにTaxationは重要である。とくにM&Aは動く金がデカイから、課税ベース*税率で決まる税金は、課税ベースがでかければでかいほどボリュームとして無視できなくなってくる。

知っている人には「アホか。当たり前だろ」という話だが、そこまでちゃんと税制を意識してこなかった身としては、非常に新鮮。税金というのは動かせない所与の条件として考えていたから、関心も薄かった。でも上述のケースの場合ではやりようによって課税額を変えられる。また、金融資産のポートフォリオを組むときも、金融資産の種類によって税金は異なるので、税金を無視しては最適なポートフォリオは組めない。ファイナンス入門で学ぶ「効率的フロンティア」では、税金というファクターは考慮されていないのだ。でも実際に非課税のMunicipal Bondとか税体系の異なる資産を考慮して組み合わせをイロイロ計算してみると、税要素を考慮しなかった場合とは全く異なるリターン・リスク分布が得られる!投資判断にとって、税金は単なる外生要因ではなく、重要な説明変数として考慮しなければならないことを痛感する。

経済学的な見地でも、税金は面白い。経済学では「インセンティブの設定とその結果」が1つの重要な問題だが、税金は人の経済的インセンティブを操作する最も分かりやすい手段だ。上に紹介したケースでは、税制にいわゆる「抜け穴」があり、それを利用して多大な節税を実現させたわけだが、これは政策側の意図せざる結果だ。政策側は、起こりうる全てのケースを想定して抜け穴のない法制度をつくることはできない。能力的にもコスト的にもそれは非現実的だ。他方、課税される側は、常に税金を安く抑えたいインセンティブがある。これは当然だし、合法的である限り問題はない。政策側にとっても、このインセンティブを利用してカネを自分のもっていきたいところに流せる、というメリットがある(ハイブリッド車を税制優遇して環境改善につなげる、とか)。

ただ、常に利益追求する側のほうが本気度は高いし、見返りが高いので優秀な人材が集まる。(昔の話:優秀な人材は、高給の投資銀行に行くだろうか、規制当局に就職するだろうか?)。なので、必ず「抜け穴」を見つけて政策側の想定外の節税・利潤機会を獲得する。それを見つけた規制当局は、あわてて新しい法律を作って、その穴をふさぐ。でもそれによってまた新たな「抜け穴」ができる。この「税制定」→「抜け穴」を利用した想定外の利潤獲得→「法制度の継ぎ足し」→「新たな抜け穴」を利用、というイタチゴッコは終わらない。

実際、米国企業CEOの給料が高すぎるとして、過去に実質的にサラリーの上限を定める税制が制定されたのだが、企業側はサラリー以外の報酬、つまりストックオプションを増大することで対応。結果としては、かえってCEOと一般従業員の報酬格差は跳ね上がり、所期の政策目的と反する「意図せざる結果」が得られた。今問題になっているAIGの例も、コレに似た部分がある。それにしてもこの場合の政府の「後だしジャンケン」は、かなり異例なので業界側もビビッているが・・・

また、税金は社会のかたちも大きく左右する。レーガン政権でものすごい所得税の減税が行われたが(1986年50%→28%)、コレは景気浮揚に奏功する一方、現在の格差社会を基礎付けるドライバともなった。(まあ、金持ち優遇が「意図せざる」ものだったかどうかは微妙だが・・・・)オバマは確実に所得税率を上げると見込まれているので、今から企業や富裕層は対策を練っている模様。いずれにしても、Taxってのはミクロ・マクロ両面でメチャ重要てのが良く分かる。

極端なシカゴ学派だったら、政府が何をしても市場をゆがめるだけだ、と減税のほうに傾くかもしれないが、「どう税制を作りこむか」という問いに対して、純粋に経済学的な意味で効率的な解を出すことはできない。やはりそれは「どういう社会をつくるか」という政治社会的な判断になろう。当たり前だけど、世の中は経済だけで回っていないし、経済だけで理解できるものではない。

米国の財政出動も、主流経済学者からしたら効果は薄いものというのが大半の意見だろう。でも、政治的には何かするという姿勢を示すことが重要だし、それでいくらか雇用改善につながるのなら、それは意味がある。投資額に対して、雇用改善のパフォーマンスが悪いとしても、そのトレードオフをしっかり認識して「それでもこの層の人たちの雇用は守る」と決断するなら、それは立派な政治判断である。責任をとって決断をする、ってのが政治家の仕事。そのトレードオフの関係をしっかり包みかくさず理論的・定量的に示すのが、経済学者の最大の貢献かもしれない。

他方、日沈む国となりつつある俺の母国の首相は、おそらくそんなトレードオフの理解もなく不用意な失言をしているようだが・・・

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ブログ王

  by helterskelter2010 | 2009-04-09 09:49 | Study

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