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「武器」としてのバリュエーション

Prof. Gregory Nathanielの「Cases in Financial Management」が超面白い。かのラザード・フレール(M&Aで有名な投資銀行)のパートナー、その他PEのパートナー、石油会社のCEOなどを歴任してきた豪の者だけあって、授業もものすごい迫力。内容は実にプラクティカル。

基礎科目「Corporate Finance」では「教科書通りのバリュエーションはこうやるんですよ」ということを学んだが、この「Cases~」では、そういう教科書で載っているようなマトモなバリュエーション手法を使っても、前提の置き方でいかに大きく企業価値評価の結果が変わるかをケースで学ぶ。売り手であればより高い価格で企業を売りたいし、買い手であればより低いバリュエーションを出したいだろう。いかに自分の都合のよいようにバリュエーションをし、ロジカルに主張できるか。まさにバンカーに求められる実践的なスキルである。たしかに俺も投資銀行でインターンをしていたとき、有名MDが「Fair Valueがいくらかなんかは、考えない。顧客のためにどれだけいい値段を出して、それを押し通せるかが勝負なんだよ」と言っていて、衝撃を受けたが、まあ考えてみればそうだわな。学者からしたらどれだけ正確に価値評価できるかが重要なんだろうが、実際に取引を完遂しようとしている立場からすれば、バリュエーションも交渉のための重要なツールの1つなのだ。

これこそがバリュエーションのアートの部分で、実に面白い。βのとり方、エクイティプレミアムのとり方(標準的な教科書で提示されている数値でも3%~7%とレンジが広い!)、対象企業のレバレッジの想定、terminal valueの成長率、等々、裁量に任される部分があまりに大きいために、ある種「いかようにでも」数字はいじれる。教授の話し方もべらんめえ調で楽しい。「お前ら、コーポレートファイナンスで教授がこういう風にやれ、と教えてくれたからってそのまま鵜呑みすんなよ!Do what ever you want, but you gotta know what you're doin'!!」。明らかに他のアカデミックな教授とは雰囲気が違います(笑)。現場での泥臭い交渉、修羅場をいくつもくぐりぬけてきたからこその知恵があふれている。企業戦略のために、コーポレート・ファイナンスを「武器」として使いこなすことを意識した授業で、これぞMBAの真骨頂でしょう。他にとっているLuigi Zingales教授(超有名なヒト)のPEの授業もそうだが、ここにいたって本当にChicago Boothにきてよかった、と思う。1年目より負荷が多くて想定外に遊ぶヒマがないんだけど(笑)。

今回組んでいるスタディ・グループもすごくいい感じだ。インドのIIT出(!)のエリート・エンジニア、カナダ出身のバングラデシュ人、これまたエンジニアのアフリカ出身のWeekend MBA生。1つ良くわかったのは、優秀なヤツよりも、モチベーションが高いヤツがいたほうがグループはちゃんと機能するということですね(もちろんChicago Boothで優秀じゃないヤツなんてそんないないと思うけど・・・)。ファイナンスの「ファ」の字も知らなかった俺が、グループ・メンバーにバリュエーションのイロハを教えられるまでになったのも、感慨深いものです。がんばりませう。

  by helterskelter2010 | 2010-01-19 07:08 | Study

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