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PUZZLEとMYSTERY

エンロンのケースはきつかったなぁ。オプションの組合せとかイマイチ苦手だ。Financial Instrumentsをとっておけばよかったか・・・

エンロン関連で面白いのがこの記事。国家安全保障の専門家、Gregory Trevertonの示した「PUZZLE」と「MYSTERY」の違いをテーマにしながら、エンロン事件とは何だったのか考察していく。

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オサマ・ビン・ラディンの居場所が分からないのは「PUZZLE」。ビン・ラディンがどこにいるのか分からないのは、その情報が十分に入手できていないから。彼の居場所を突き止めるカギは、彼の居場所について知る誰かからの情報提供にある。

他方で、フセイン大統領打倒後のイラクがどうなるかは、「MYSTERY」。コレには単純な答えはない。「MYSTERY」に迫るカギは、情報の多寡ではなく、状況の判断や不確実性の評価にある。

「PUZZLE」ととらえるか、「MYSTERY」ととらえるかで、その後の対応も変わってくる。9.11テロの動機を「PUZZLE」と考えるならば、対応としてはCIA要員を増やし、アルカイダに関してどんどん情報を収集していくことだ。そうではなく、「MYSTERY」と考えるならば、情報をこれ以上収集するよりも、むしろCIAの分析精度を上げたいと思うだろう。あるいはFBI、国防省等他の機関との連携を密にしたいと思うかもしれない。

エンロン事件は当初、「PUZZLE」だと思われていた。「情報開示が不十分で、うさんくさい取引を隠していた」んだ、と。しかしそうではないんだ、とこの記事は言う。SPVを使った取引について言えば、財務諸表を精査すれば分かることだった。実際、エンロンの利益が過大評価されていることに気づいた新聞記者は、別にエンロン内部の告発者から情報を得たわけではなく、財務諸表をじっくり読んで数字を照合することで事実を明らかにしたのだ。ウォーターゲート事件の「ディープスロート」がいた訳ではないのだ。問題は、このSPV取引がクソ複雑だということだ。SPV取引を分析したPower Reportというのがあるのだが、そのうちの1つの取引を分析するのに専門の教授でも数ヶ月を要したそうだ。

エンロンは数千のSPVを設立して取引を行っていた。問題が「PUZZLE」ならば、全てこれらの情報を開示すればいい。でもどうやって?優に数千ページを超える資料になるだろうし、分析も容易でない。情報を開示すればOKというレベルの話ではなくなっている。

だから、このエンロンの問題は「MYSTERY」なのだ。「PUZZLE」にはエネルギーと忍耐強さがあればなんとか対応できるが、「MYSTERY」に取り組むには「経験とインサイト」が必要だ。経験とインサイトをどう使うのか?という点については、本記事で紹介されている、第2次大戦中の連合国軍によるナチスの行動分析の事例を読んでみてほしい。非常に面白い。

コンサルとかバンカーのパートナー・MDクラスの人たちにも聞いた話だけど、こうも世の中情報にあふれていると、情報を集めているだけですぐに時間がなくなる。でも彼らが対応する問題(=仕事)は、「PUZZLE」ではなく「MYSTERY」に分類されるものがほとんど。必要な情報はある程度集めれば、それ以上集めることで得られる限界的な効果は非常に小さくなる。勝負なのは、上で述べた「経験とインサイト」。コンサルに例えれば「仮説思考」と言ってもいいのかもしれない。思えば俺も前職時代、1-2年目まではいろんな知識を吸収できて本当に楽しかったけど、3年目くらいからプロジェクトやってて色々「詳しく」なっていく感覚はあるけど、「インサイト」が得られる実感がなくなってきて、ああー仕事つまらんなぁ、と思い始めていた。調査プロジェクトがほとんどだったからしょうがないんだけどね。

MBAのケーススタディだと、与えられる情報はケースだけに限られているし、それ以上情報を集めることに時間は費やさずに、「経験とインサイト」に集中できるのがいいね。特に今回の「Cases in Financial Management」では、その部分がかなり鍛えられているのが実感できて、本当に楽しかった。ケースの醍醐味はコレですね。

  by helterskelter2010 | 2010-03-11 17:12 | Study

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