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Entrepreneurの心性

飲料ブランドの「Nantucket Nectars」「Owater」の創業者の1人、Tom Firstの講演を聞いた。ランチタイム。Free Pizzaをほうばりながら彼の創業ストーリーに耳を傾ける。

最初のブランド、「Nantucket Nectars」はジュース。Tomは共同創業者で大学の友人であるもう1人のTom (Tom Scott)と、ニューイングランドで何でも屋をやっていた。船をベースにして、荷物の配送から船舶エンジンの修理まで、文字通り何でもやっていた。その名も「Allserve」。ある日Tomたちが自家製のジュースの販売もはじめると、これがバカ売れ。Nantucket(場所の名前ね)で知らない人はいないブランドとなった。Tomはこのビジネスを愛した。初期段階でも相当に苦労をしたが、このビジネスが好きなのと、Nantucketにい続けたい一心で頑張った。

でも事はそうそううまくいかない。Nantucketでは売れたが、他の地域、たとえばワシントンDCではさっぱり売れなかった。やがて資金が底をつき、資金調達しなければならなくなった。時は1992年。今ほどじゃないが、不況期だ。運よく著名な投資家の出資を仰ぐことができ、事業を再び軌道にのせるため、奮闘。Arizona Ice Teaという商品を販路にのせたり、いろいろ頑張ったが、やはりうまくいかない。
「悪い時ってのは、信じられないくらい悪いことが続くもんだよ。ある日、ものすごく暑い真夏の日のことだった。俺たちの商品を配送していたトラック・ドライバーが、あんまり暑いからか知らないが、突然仕事をやめたいと決断したらしい。トラックのキーはそのままに、エンジンもかけっぱなしにして、いきなりトラックを残していなくなったんだ。もちろんトラックにはジュースがぎっしり積まれている。俺のところに警察から電話があって、『おたくのトラックが無人で道の端を走っていたぞ、回収しに来い!』とどやされたよ。こんな馬鹿げたことが立て続けに起きたんだ。」

投資家から出資してもらった金もすり、Tomのビジネスはすっからかん。戦々恐々として投資家への報告会議にでる。取締役はKPMG出身の怖いエリートウーマンがずらり。「やべえ、資料は今後のビジョンの説明に大半を使って、1枚だけ『ちなみに出資いただいた資金は底をついてしまいました』ていうスライドを資料の真ん中くらいに隠しとけ」としたものの、当然バレた。

「6ヶ月以内に何とかしろ、できなかったら事業はたたむ」との厳命を受けた。
最初の数日間はヤケ酒をしていたが、やがて頭を切り替えた。ブランドの強化・普及に集中することにして、パッケージング、広報宣伝の手法を徹底的に見直した。
特にラジオでのCMは受けた。音楽をかけながら、特に台本もなくTomたちが創業のこれまでの経緯などを話しているのを録音しただけだが、これはその年のラジオCMのアカデミー賞にあたる賞を受賞した。
事業は徐々に回復し、安定化した段階で大企業Cadbury Schweppsに売却した。
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その後、Tomはまた新たなブランドをつくった。「Owater」だ。運動をしているときには良くGatoradeなどを飲んでいたが、もっとすっきりしたもの、健康的なもの、シュガーレスな飲料がないかどうかと考えたのがきっかけ。
この日もOwaterが配られた。俺が飲んだのはレモン味のやつ。
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正直、そんなにおいしいとも思わなかったけど、ソフトドリンクといえばコーラとかスプライトばかりの中、こういうのはあってもいいかな、と思った(結局ミネラルウォーター飲んでるけど)。
Tomのコメントとして印象深いものを2つ:

「ビジネスを立ち上げていくのは、山登りのようなものだ。ビジネスについて語る人は山ほどいるが、彼らは山を登らずに出発地点から離れていないだけだ。アントレは実際に山を登る。登ることで、自分がどの地点にいたかも分かるし、登ることで、自分の周りの景色が変わることも分かる。登ってみないと、自分が正しい方向に進んでいるのか、あるいは間違った道を進んでいるのかも分からない」

「俺にとってのビジネスは、究極的にはブランドを売ることだ。投資家に出資を仰いだり、流通会社と交渉をして契約をとったり、いろいろあるが、最終的にはSellable Brandをつくれるかどうかが問題だ。その意味で、俺は消費者と近い部分で自分のブランドを売ることができる、この飲料ビジネスというのが大好きだ」

バンカー、コンサルタント、事業法人のCEO、投資家、いろいろな人と話したり講演を聴いてきたりしたけど、やっぱりこのアントレという人種は何か違う。ある部分については心配になるくらい楽観的だし、無謀な感じがする一方で、その思いの強さというか、信念の固さ、ビジネスへの愛着の度合いは並外れている。単純にカネ稼ぎだけを考えていては出てこない発想力がある。Tomは「俺は大企業では働かない。俺は自分のブランドをつくることに興味がある。だから小さいベンチャーを続けていく。大企業は既に築き上げた資産のマネジメントに時間をとられすぎる」、と言う。

俺の知り合いで、コンサル出身でVCに行った奴も、「起業家と接するだけで本当に面白いよ。俺らはいつもロジカルに詰めて、現実的だけどつまらない選択を検討していくだろ。彼らは考え方からしてスタート地点が違うんだよ。あんまり暴走してもダメだから、そこは俺らがサポートするんだけどな(笑)」と言っていた。

俺もコンサル出身なので、その気持ちは分かる気がする。自分にはないものなので、アントレのメンタリティはうらやましいものがある。まあ素質のないものを無理してやるのはよくない、むしろ投資家サイドが自分には合っているのかな、と最近思い始めている次第。

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ブログ王

  by helterskelter2010 | 2008-11-14 07:08 | Career

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