2009年 12月 26日 ( 1 )

 

THE WRESTLER

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2008年、ミッキー・ローク主演、監督Darren Aronofsky 。2008年のアカデミー賞ノミネート作品はほぼ観たが(DoubtとReaderは未見)、その中でも一番好きな映画かな。いや、アカデミー賞に関係なく最近観た中ではone of the best。コメディならトロピック・サンダーとIn Bruges(これはブラックだが)、サスペンスならChangelingが出色だったが、このThe Wrestlerは何か観た後も非常に心に残る、stickyな作品だ。逆にアカデミー作品賞受賞のスラムドッグ・ミリオネアは、面白いんだけど優れた企画モノを観させられてる感じで、「うまいなー」とは感心しつつもそのほかには特に心に残るものはなかった。

1980年代に一世を風靡したプロレスラー、Randy "the Ram" Robinsonだが、90年代にその人気は凋落。人気も肉体もピークを過ぎた中で、ニュージャージーで開催される単発の小規模イベントに出場する日々。収入も乏しいので、スーパーでのバイトで補う。ある試合の後、これまでの不摂生や試合でのダメージがたたったのか、心臓発作を起こしてしまう。ドクターストップがかかり、生きがいであったプロレスを離れざるをえなくなる。ストリップ・バーで仲良くなったストリッパーPam(この人の演技最高)のアドバイスもあり、長年連絡もしていなかった娘に再会し、過去の過ち(詳細は明らかでないがRamは家族を捨てて家を出たらしい)を率直に語り、許してほしいと言う。親子関係を完全に取り戻すとまでは言わない、ただ「俺を憎まないでほしい」と。

このシーン。俺は映画を観て滅多に泣いたりしないが、このシーンのミッキー・ロークの演技(というか素にちかいんじゃないか)には思わず涙腺が熱くなる。


しかし、最後には娘からも、そしてPamからも突き放され、「俺の生きる場所はここしかない」とプロレスに戻る。心臓に痛みを感じながらも、リングに上がる。スポットライトがまぶしくRamの背中を照らす中、大技"Ram Jam(ダイビング・ヘッドバット)"を繰り出そうとするところで、映画は幕を閉じる。

コレは男なら観ておくべき1本でしょう。かつてのスターであったプライド、プロレス以外しか行き場のない不器用な生き方、まったく悲哀に満ちているとしかいいようがない。撮り方が本当にうまくて、どれとして無駄なシーンがない。ステロイドを打ち、日焼けサロンに通い老いた肉体を奮い立たせるさま、家賃払うカネもないのにストリップ・バーでは大金出して「おつりはいらないよ」と言ってしまう見栄、80年代の栄光が忘れられず音楽もガンズがかかると心躍ってしまうダサさ(笑)、心が傷つくと古巣のプロレス団体に戻って仲間たちの癒しを求めてしまう弱さ。そう、全編にわたって、高倉健先生の「自分、不器用っスから」がサブリミナルに所狭しと練りこまれている(笑)。しかし何よりきいているのがミッキー・ロークの飾りのない演技だろう。ミッキー自身がすでに落ちぶれたスターであり、仕事も友人もなくなったどん底の時には「飼っていた犬だけが俺の友達だったよ」という経験をしている彼だからこそ、心に迫る演技をできたのだろう。その意味でコレは一種のドキュメンタリー・フィルムである。

当初は製作側の意向でニコラス・ケイジを起用するようにプレッシャーをかけていたようだが、そんなのは全くもってBULLSHITだ。監督はよくミッキー起用を押し通した、あっぱれ。
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  by helterskelter2010 | 2009-12-26 01:35 | Movie

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