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超・格差社会 アメリカの真実

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遅ればせながら・・・過ぎるな。でもまあ、アメリカで暮らしてみてから読むと、いろいろ膝打ちたくなる点や、もっと深い疑問に導いてくれる部分に気づく、つまり味わいが濃くなるので、まあいいか。「格差社会の極右」と言われるアメリカ。いつからそうなのか、ナンデそうなのか、具体的にどうそうなのか、てところを経済・政治・社会・文化・教育等の多様な切り口から説明していく。テーマのフックの強さ(関心を引きやすい)、射程の広さ、現地に住むナマの声という説得性(コレが一番強かったりする)、という面では、日本語では他にそうそうない本だし、読んで損はナシ。

面白かったのは後半の第5~7章。教育(第5章)、政策決定メカニズム(第6章)はあまり知らない分野だったので新鮮だったし、第7章はシリコンバレーの話がチト冗長だったのを除けば、米国ビジネススクールに来ると実感するアメリカ人の考え方とか人との付き合い方について、改めて確認できる。第3章、第4章の経済・歴史の部分は、既存文献で知ってた内容だったこともあり、特に真新しくはなく。でも知らない人にはざっくり読めるのでいいのかもしれない。アメリカ経済史ってなぜか日本語でいい本ないんだよねえ。研究者の層も薄いし。まだヨーロッパを研究する伝統が根強く残っているから、なかなかいい学者がでてこない。経営史はそれなりに文献はそろっているが。

著者の専門である経済よりも、所得層別のライフスタイルや、仕事・カネに対する考えを生々しく描く部分が一番俺には面白かった。やはりアメリカはその意味ではなかなか変わっている。ここまで「経済成功がイチバン!」と素直に奨励できる文化もすごい。資本主義のマザーであるイギリスだって、一応みんな表立ってはスカしているもん。誰かこのアメリカ資本主義のエートスについてしっかりした研究本をだすべきだろう。ウェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のアメリカ版。ウェーバー的エートスとアメリカのそれは、全く異なる。

惜しむらくは、文章の読みにくさと図表の雑さ。著者というよりも編集の責任だと思うが、ところどころ文章がロジカルにきれいでないところが散見される。特に経済・政治を描いている部分では、文章に抑制がきいていないので、誤読を招きやすい。例えばp.146なんで、連銀を設立したことが即座に1920年代の株式バブルを導いたかのように読めてしまい、ちょっと筆が走りすぎている感がある。図表はどれも見づらく、俺がコンサルレポートでこんなの出したらボスに殺されること間違いなし。100歩譲ってコンサルレポートじゃないんだからそこまで綺麗に仕上げなくてもいいでしょ、ってのはあるにしても、ジニ係数の統計の出所元が「ウィキペディア」ってのは・・・原所は国際機関(IMFとか世銀とか)だろうし(でなかったらなおヤバイな)、ネットですぐ調べられることなのでその辺はカッチリやってほしかった。

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ブログ王

  by helterskelter2010 | 2009-04-10 14:58 | Books

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