ポリーニ大統領
巨匠、マウリツィオ・ポリーニのコンサートを聴く。彼の生演奏を聴くのは、実は初めて。日本でもチケットを購入したことがあったのだが、スケジュールが合わず泣く泣く諦めたこともあった。それがシカゴで聴けることになるとは。
テレビやCD音源で聴くだけでもそのすごさをビシビシ感じていただけに、ライブはどれほどのものか。
Lower Balconyという席。悪くはない。これで40数ドル。しかも開演数日前でも予約できた。日本ではありえん。
演目はこんな感じ。
Beethoven Piano Sonata No.17 in D Minor Op.31, No.2 (Tempest)
Beethoven Piano Sonata No.23 in F Minor Op.57 (Appassionata)
Schuman Fantasy in C Major Op.17
Chopin Four Mazurkas, Op.33
(No.1 ~No.4)
Chopin Scherzo No.2 in B-flat Minor. Op.31
前半はベートーヴェンで熱く始める。正直、もう爺さんだしパワーねえかな、と思ったが、全くそんなことは感じさせない。目をつぶりしばらく流れるように旋律を引いたかと思えば、突如椅子から腰を持ち上げ、体全体で鍵盤を叩く。かっけええ。
「熱情」はややテンポ早め。のっけから飛ばし過ぎじゃねえか、というくらいのダイナミックな演奏。間違いない、今日のコンサートは最高の体験になる。確信を感じた。
ベートーヴェンが終わり、休憩。
Chicago Symphony Fall にはこんなBall Roomがある
ここで妻とコーヒーを飲みながら、後半への期待を膨らます。
しかしどうでもいいが、ここアメリカで飲む「アメリカンコーヒー(ないしはレギュラーコーヒー)
」は、全くコクがない。間違えて薄めすぎたんじゃないかと思わせるくらいだ。つまり俺的には「まずい」。こういう味がアメリカ人好みなんだろうか。
後半開始。シューマンがまたヤバかった。音のドラマに完全に持ってかれた。時間がたつのが異様に早く、あっという間に演目はショパンを残すのみとなった。ポリーニと言えばショパンで有名なんだが、今回聴いて思った、やはり彼にはショパンが合う。ベートーヴェンも良かったけど、あの過度にエモーショナルな感じになり過ぎず、でもキザに構成美を見せつける感じ、何言っているか良く分からんが、とにかく「ショパンな感じ」がポリーニにはぴったりハマる。
マズルカの4曲ではポリーニの独壇場が始まった。音の透明な粒が高く舞い上がり、他の音の粒と連鎖して、美しい弧を描きながら消えていく。そんな魔法みたいな旋律が彼の手元から延々と湧きあがってくる。
最後のスケルツォでも彼は手を緩めない。完全にホールを一人で支配。妻もこの最後のスケルツォには相当に感動したらしく、涙を流しそうになったほどだという。
よし、わかった、アメリカの大統領はマケインでもオバマでもない、ポリー二だ。ポリーニが大統領。Pollini for president!! ただの音バカと化した俺。
でもあの瞬間、あのホール内に限って投票をしたら、何の選挙でも彼が1番になっていただろう、そう感じさせる素晴らしいパフォーマンスだった。
盛大な拍手、スタンディング。
アンコールでさらに3曲をぶちかまし、颯爽と舞台袖に消えていった。
この後、新譜CDにサインをしてもらうという場が設けられた。場所はホール横にある音楽ギフトショップ。ポリーニ、営業のセンスも見せつけるとは、もうかなわん。
興奮して特大ポスター(どこで入手したんだ)にサインしてもらう熱狂ファン
もちろん、俺のCDにもサインしてもらいました!
来月はあのとんがった天才ピアニスト、Lang Langも来る。Chicago Symphony Hall、しばらくは通い詰めることになりそうだ。
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by helterskelter2010 | 2008-10-13 15:44 | Music